ゼンシーア
『ウマ娘 シンデレラグレイ』を読んだり見たりした多くのファンが、「フジマサマーチは、なぜこんなにも報われないのだろう…」「かわいそうで見ていられない」と感じています。オグリキャップにとってかけがえのないライバルであり、多くの期待を背負って登場した彼女が、なぜこれほどまでにファンの胸を締め付ける存在になったのでしょうか。その「かわいそう」という感情の根源には、作中の描写と、彼女のモデルである史実の競走馬、マーチトウショウの人生が深く関わっています。ここでは、彼女がかわいそうと言われる7つの理由を、作中の描写と史実を交えて掘り下げていきます。
フジマサマーチがかわいそうと感じる7つの具体的理由
オグリキャップに2度勝利したのにその後は全敗
カサマツトレセン学園の特待生として、誰もが認めるエリートウマ娘だったフジマサマーチ。物語の序盤で、彼女は規格外の才能を持つオグリキャップと対戦し、なんと2度も勝利を収めます。
これは、史実のモデル馬マーチトウショウがオグリキャップに唯一土をつけたという輝かしい功績に基づいた設定です。しかし、これが彼女の「悲劇」の始まりでもありました。
3度目の対戦では、覚醒したオグリキャップに圧倒的な差をつけられて完敗。このレースを境に、彼女がオグリキャップに勝利することは二度とありませんでした。
東海ダービーの夢が叶わない運命
フジマサマーチは、幼い頃から「東海ダービーを制覇する」という明確な夢を掲げ、その目標のために誰よりもストイックに努力を重ねてきました。彼女が笠松に留まることを決意したのも、中央へ進むオグリキャップとは異なる、自分だけの道を歩むためでした。
しかし、その夢をかけた東海ダービーで、彼女は無情にも4着という結果に終わります。勝利を渇望し、夢に向かってひたむきに走ってきた彼女の努力が報われない結末は、多くのファンに「なぜ…？」という悔しさと、彼女への深い同情を抱かせました。
中央競馬挑戦での圧倒的な実力差を見せつけられる
東海ダービーでの敗北後も、フジマサマーチは再び立ち上がります。今度は、オグリキャップを追うように中央競馬への挑戦を決意。しかし、そこで彼女を待ち受けていたのは、地方とは比べ物にならない圧倒的な実力差でした。
史実では、中央移籍後4戦するも、全て惨敗（4戦全敗）という厳しい現実を突きつけられます。この現実は、キャラクターの真面目さや努力家の側面と相まって、彼女の境遇をさらに悲劇的に際立たせ、ファンの胸に深く突き刺さるのです。
努力家で真面目なのに報われない性格設定
フジマサマーチのキャラクター性は、まさに「努力家で真面目」。遊びを知らず、常にレースと向き合う生真面目な姿は、彼女がどれだけ夢に懸けているかを示しています。しかし、そのひたむきな努力が作中ではなかなか報われません。
生まれながらの天才であるオグリキャップや、明るく才能に満ちたベルノライトとは対照的に、努力しても勝利を掴めない彼女の姿は、多くのファンの心を打ち、その不器用な生き様に感情移入させるのです。
オグリキャップとの格差が物語が進むほど広がる
物語が進むにつれて、オグリキャップは中央競馬で次々と勝利を重ね、スターダムを駆け上がっていきます。一方で、フジマサマーチは地方競馬で足踏みし、やがて物語の中心から遠ざかっていきます。
初期のライバルとして互角の存在だった二人の間に、現実的な「格差」が生まれていく様子は、読者にとって非常に辛いものがあります。オグリキャップの輝かしい成功が、相対的にフジマサマーチの不遇さを際立たせ、ファンの「かわいそう」という感情を増幅させてしまうのです。
ファンから愛されているのに出番が少ない
フジマサマーチは、その悲劇的な背景とストイックなキャラクター性から、コアなファンから絶大な人気と支持を得ています。しかし、物語のメインストリームが中央競馬に移るにつれて、彼女の出番は激減します。
愛されるキャラクターであるにもかかわらず、その活躍を十分に描いてもらえないジレンマは、ファンの間で「もっとマーチの姿を見たいのに！」というもどかしい感情を生み出しました。この出番の少なさも、彼女を「かわいそう」だと感じる大きな理由の一つです。
史実の悲劇的な結末を知っているファンの感情移入
アニメやコミックスを深く楽しむファンは、モデルとなった史実の競走馬についても調べています。フジマサマーチのモデルであるマーチトウショウは、中央で敗れた後も地方競馬で長く現役を続け、11歳まで走り続けました。しかし、その生涯の最期は、去勢手術後の心不全という悲劇的なものでした。
この史実を知っているファンにとって、どんなに努力しても報われず、悲しい結末を迎えたマーチトウショウの姿が、フジマサマーチというキャラクターに重なり、計り知れないほどの「かわいそう」という感情を抱かせるのです。この歴史的な背景が、彼女の物語を単なるフィクション以上の、深く重いものにしていると言えるでしょう。
史実マーチトウショウの悲劇的な競走馬生涯
『ウマ娘』のキャラクター、フジマサマーチの物語は、モデルとなった競走馬マーチトウショウの生涯を色濃く反映しています。アニメや漫画では描ききれない、史実のマーチトウショウが歩んだ、輝きと挫折に満ちた道。そして、その先に待っていた悲しい結末こそが、ファンがフジマサマーチに「かわいそう」という感情を抱く最も深い理由なのです。ここでは、一頭の芦毛の競走馬が駆け抜けた、あまりにも切なく、そして胸を締め付ける生涯を振り返ります。
笠松時代はオグリキャップと互角の実力
1985年、北海道で生まれた芦毛の牡馬、マーチトウショウは、地方競馬の笠松でデビューしました。彼の運命を変えたのは、同じ牧場、同じ厩舎で生まれた同期の馬、オグリキャップの存在でした。
オグリキャップがデビュー戦を迎えたその日、同じレースに出走していたのが、マーチトウショウです。そして、そのデビュー戦を制したのは、オグリキャップではなく、マーチトウショウでした。
彼にとっての2度目の対戦でも、再びオグリキャップに先着し、勝利を収めます。これは、後に歴史的な名馬となるオグリキャップに、公式なレースで2度も土をつけた唯一の競走馬という、まばゆいばかりの功績です
。笠松では「オグリキャップのライバル」として、彼に負けず劣らずの注目と期待を背負い、輝かしい成績を収めました。まさに、フジマサマーチが作中で描かれた「カサマツのエース」そのものの存在でした。
中央競馬移籍後の4戦全敗という現実
オグリキャップが中央競馬へ移籍し、次々と快進撃を続ける中、マーチトウショウもまた、後に続くように中央の舞台に挑みます。しかし、そこで彼を待っていたのは、地方とは異なるあまりにも厳しい現実でした。
マーチトウショウは、中央で4つのレースに出走しますが、結果はまさかの4戦全敗。しかも、一度も掲示板に載ることすら叶いませんでした。笠松ではエースとして君臨し、オグリキャップにも勝利した輝かしい実績を持つ彼が、中央の分厚い壁の前に完膚なきまでに打ちのめされてしまったのです。
輝かしい地方時代と、厳しい現実を突きつけられた中央での挫折。このあまりにも対照的な境遇は、多くのファンがフジマサマーチというキャラクターに、深い同情と悲哀を感じる理由となりました。
高知競馬での長い現役生活と最期
中央で結果を残せなかったマーチトウショウは、再び地方競馬へ戻ることになります。しかし、その行き先は、かつて輝きを放った笠松ではなく、遠く離れた高知競馬場でした。彼はそこで、なんと11歳という高齢になるまで現役を続けます。これは人間でいうと55歳前後に相当する年齢。
かつてのライバル、オグリキャップが引退し種牡馬として第二の馬生を歩む中で、マーチトウショウはただひたすらに走り続けました。レースを走り、賞金を稼ぎ、そして生きる。その姿は、華やかな舞台から忘れ去られた、一頭の地方馬の現実を物語っています。
そして、現役引退後、種牡馬になるために受けた去勢手術の直後、心不全でこの世を去りました。華々しいデビューから始まり、挫折を味わい、ひたむきに走り続けた末に待っていたのは、あまりにも悲劇的な結末。この史実を知るファンにとって、フジマサマーチの物語は単なるフィクションではなく、一頭の競走馬の尊厳と悲哀を背負った、重い現実なのです。
アニメ『ウマ娘 シンデレラグレイ』でのフジマサマーチの活躍
史実のマーチトウショウの生涯が、フジママーチというキャラクターに深みを与えていることは間違いありません。しかし、私たちが彼女にこれほどまでに心を奪われるのは、何よりも『ウマ娘 シンデレラグレイ』の物語の中で、彼女が確かに、そして強く輝いていたからに他なりません。彼女は単なる「かわいそうなウマ娘」ではなく、オグリキャップの物語を語る上で決して欠かすことのできない、重要な存在なのです。
カサマツ編での重要な存在感
『ウマ娘 シンデレラグレイ』のカサマツ編において、フジマサマーチは主人公オグリキャップの最初の、そして最強のライバルとして登場します。カサマツトレセン学園の特待生であり、圧倒的な実力と完璧なまでのストイックさを兼ね備えた彼女は、規格外の才能を持つオグリキャップに対しても一歩も引かず、2度にわたって勝利を収めました。
この勝利は、オグリキャップに初めて「敗北」という現実を突きつけ、彼女を成長させる上で欠かせない経験となります。フジマサマーチの存在があったからこそ、オグリキャップは自分の未熟さを知り、強くなることを決意したと言っても過言ではありません。
彼女はただのライバルではなく、オグリキャップという「シンデレラ」の物語を動かす、重要なキーパーソンとして、強く、そして鮮烈な印象を私たちに残してくれたのです。
外伝『The mermaid left behind』での主役
物語のメインストリームが中央に移り、フジマサマーチの出番が少なくなったことに寂しさを感じたファンは少なくありません。しかし、コミックス10巻に収録された外伝『The mermaid left behind（残された人魚）』は、そんな彼女の物語を深く、そして丁寧に描いてくれました。
この物語は、東海ダービーに敗れ、中央への道も閉ざされた彼女が、それでも走り続ける理由を問う内容です。タイトルにある「人魚」とは、陸に上がった人魚が自由に走れないように、中央の舞台に上がれなかった自分自身を重ねた、彼女の深い苦悩を象徴しています。それでも、かつてのライバルであるオグリキャップの活躍を遠い場所から見つめ、再び自分だけの「人魚姫」として夢を追い続ける姿は、多くのファンの心を震わせました。
この外伝を読むことで、私たちは単に彼女の不遇な境遇を悲しむだけでなく、どんなに報われなくても、ひたむきに走り続ける彼女の芯の強さを知ることができるのです。
フジマサマーチに関するよくある質問
フジマサマーチの物語を知るほどに、私たちの胸にはさまざまな疑問が湧いてきます。なぜ彼女は、オグリキャップに勝てなくなったのか？ 史実のマーチトウショウは本当に中央で結果を残せなかったのか？ そして、彼女が再び活躍する姿を見ることはできるのだろうか？ ここでは、そんなファンの皆さんが抱えるであろう、よくある質問に答えていきます。
フジマサマーチはなぜオグリキャップに勝てなくなったのか？
カサマツでは、フジマサマーチはオグリキャップに2度も勝利しました。しかし、3度目の対戦では圧倒的な大差をつけられて完敗します。この一戦を境に、二人の差は決定的になりました。
その最大の理由は、オグリキャップが「怪物」としての才能を開花させてしまったからに他なりません。
フジマサマーチは、東海ダービー制覇という明確な目標に向かって、誰よりも真面目に、誰よりもストイックに努力を積み重ねるウマ娘です。しかし、彼女の努力は、規格外の才能を持つオグリキャップの成長速度には追いつけなかったのです。
オグリキャップは、フジマサマーチとの激しい競争を通じて、自身の底知れぬ能力に目覚めました。
彼女が「頑張り屋の秀才」ならば、オグリキャップは「一度火がついたら止まらない天才」でした。
フジマサマーチは、オグリキャップという才能を覚醒させるための、最高の「導火線」であり、その役割を終えた後、彼女自身の限界と向き合わざるを得なかったのです。
史実のマーチトウショウは本当に中央で勝てなかったのか？
結論から言えば、史実のマーチトウショウは、中央競馬で勝利を挙げることはできませんでした。彼は、中央移籍後4戦に出走しましたが、最高着順は8着と、一度も掲示板に載ることなく敗れ去りました。
当時の競馬界は、オグリキャップ、スーパークリーク、タマモクロスといった強豪がひしめき合っており、地方で活躍した馬が中央の壁に跳ね返されることは珍しくありませんでした。
マーチトウショウのこの4戦全敗という事実は、彼の物語をより悲劇的にし、ファンの心を深く揺さぶる大きな要因となっています。しかし、彼はこの挫折にめげず、その後も高知競馬でひたむきに走り続けたのです。
フジマサマーチが再び活躍する可能性はあるのか？
『ウマ娘』の世界では、彼女が再び輝く可能性は十分にあります。たとえ原作コミックスの物語が進んでいっても、アニメ化やゲーム、そしてスピンオフという形で、新たな物語が紡がれることは珍しくありません。
現に、外伝『The mermaid left behind』では、中央へ行けなかった彼女のその後の苦悩と決意が描かれました。今後、アニメ『ウマ娘 シンデレラグレイ』の2期が制作されれば、オグリキャップが新たな強敵と戦う中で、彼女の存在が回想シーンなどで再登場する可能性は高いでしょう。また、ゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』でも、新たな育成ストーリーやイベントストーリーが追加されることで、彼女が主人公として脚光を浴びる機会が訪れるかもしれません。物語はまだ続いています。フジマサマーチが、あの悲劇を乗り越え、再び輝く未来を私たちは決して諦めてはいません。
フジマサマーチがかわいそうと言われる理由まとめ
フジマサマーチが「かわいそう」と言われる理由は、彼女のモデルである史実のマーチトウショウが歩んだ、あまりにも切ない競走馬生と、その悲劇を昇華して描いた『ウマ娘 シンデレラグレイ』の物語が深く結びついているからでした。オグリキャップという規格外の才能に挑み、夢破れ、中央の壁に阻まれてもなお、ひたむきに走り続けた彼女の姿は、多くのファンの心を掴んで離しません。
しかし、「かわいそう」という感情は、決してネガティブなものではありません。それは、どんなに報われなくても、自分だけの道を進もうとする彼女の強さへの共感であり、彼女の物語を心から愛するがゆえの、愛おしい感情なのです。物語はまだ続いています。いつかフジマサマーチが、再び大舞台で輝く日が来ることを信じて、これからも彼女の物語を見守っていきましょう。
