Xへの何気ない投稿から始まり、わずか3年で累計300万部を突破。そして2025年夏、ついにアニメ化が決定した『光が死んだ夏』と、その作者モクモクれんの快進撃に迫ります。「行方不明になり戻ってきた友人が何かに変わってしまった」という誰もが一度は想像したことのある恐怖を、三重県の山間部を舞台に描いた本作。ホラーとブロマンスの絶妙な融合、活字フォントを用いた特徴的な擬音表現、そして作者が大切にする「ミスマッチさ」の哲学が、多くの読者を魅了しています。初連載とは思えない完成度で「このマンガがすごい!2023」オトコ編1位に輝いた、新世代ホラー漫画の魅力と秘密に迫ります。
モクモクれん初連載「光が死んだ夏」とは?

『光が死んだ夏』(ひかるがしんだなつ)は、新進気鋭の漫画家モクモクれんによる衝撃のホラー漫画デビュー作です。2021年8月31日から『ヤングエースUP』(KADOKAWA)にて連載が開始され、わずか3年あまりで電子版を含むシリーズ累計発行部数300万部を突破するという快進撃を遂げています。ホラー、サスペンス、ブロマンスが融合した独特の世界観と物語展開が幅広い読者を魅了し、2025年夏には待望のアニメ化も決定しました。
「このマンガがすごい!2023」オトコ編1位の快挙
モクモクれんの初連載作『光が死んだ夏』は、連載開始からわずか1年余りで「このマンガがすごい!2023」オトコ編で堂々の1位に輝きました。同ランキングは過去に『進撃の巨人』『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』といった後に社会現象となる大ヒット作が選出されてきた権威ある賞であり、デビュー作での1位獲得は異例の快挙です。
さらに本作は「次にくるマンガ大賞2022」のWebマンガ部門11位、Global特別賞、全国書店員が選んだおすすめコミック2023の5位、「マンガ大賞2023」11位など、数々の賞を受賞しています。
Twitter投稿から商業連載までの異例の道のり
モクモクれんの漫画家デビューは、多くの漫画家志望者が経験する王道ルートとは大きく異なります。もともと漫画家になることを志していなかったモクモクれんは、コロナ禍で時間ができたことをきっかけに、昔から構想していた物語と登場人物を漫画として形にしました。2021年1月、特に出版を意図せずX上で作品を公開したところ、予想外の大きな反響を呼び、複数の出版社から声がかかる事態となりました。
特筆すべきは、SNSでの作品公開からわずか7ヶ月後には商業連載がスタートしたという異例のスピード感です。モクモクれん自身は知名度がなかったため、「無料で読める方がいいだろう」という読者目線の考えから『ヤングエースUP』での連載を選択しました。
モクモクれん初連載への道のり

漫画家を志したきっかけとXでの反響
驚くべきことに、モクモクれんは元々漫画家になることを志していませんでした。絵を描くことや物語を考えることは好きだったものの、漫画としてそれを形にした経験はなかったのです。転機となったのは2020年から続いたコロナ禍。外出自粛で自宅にいる時間が増えたことをきっかけに、かねてから心の中に温めていた物語と登場人物を漫画として形にすることを決意します。
2021年1月、特に商業化を意図せず、純粋に創作活動の一環としてXに作品を投稿したところ、予想外の大反響が起こります。特にTikTokでは若い女性読者を中心に作品が話題となり、SNS上での認知度が一気に高まりました。
「ヤングエースUP」での連載開始までの経緯
SNSでの大きな反響を受け、複数の出版社の編集部からモクモクれんに連絡が入ります。連載決定から開始までの期間は驚くほど短く、2021年4月から連載の描きためを開始し、わずか4ヶ月後の同年8月31日に商業連載がスタートしました。
作品のタイトル決定も連載開始直前まで難航していました。『光が死んだ』などの候補が出るものの、最終的に担当編集者からの提案もあり、『光が死んだ夏』というタイトルに決定しました。
モクモクれん初連載作「光が死んだ夏」の魅力

三重県の山間部を舞台にした独特の世界観
『光が死んだ夏』の舞台となる三重県の山間部の集落は、閉塞感と不穏さが絶妙に融合した独特の雰囲気を醸し出しています。この舞台選びには、作者モクモクれんの明確な意図がありました。「登場人物に特徴的な方言を使わせたかった」と考えていたモクモクれんは、「関西弁とは違う絶妙なライン」として東海地方の山間部を選び、作中に三重弁を取り入れています。
また、この舞台選択には敬愛する作家・澤村伊智の影響もあります。モクモクれんが好んでいた『比嘉姉妹シリーズ』の第1作『ぼぎわんが、来る』が三重県を舞台としていたことも、選択の一因だったのです。
舞台の細部にまでリアリティを持たせる工夫も注目すべき点です。古い磨りガラスの窓、黒電話、勝手に出入りする近所の人々といった描写は、実はモクモクれんの祖母の家がモデルとなっています。
ホラーとブロマンスが融合した新しい物語
『光が死んだ夏』の真の革新性は、ホラー要素とブロマンス(男性同士の絆)を見事に融合させた点にあります。閉塞感漂う田舎町で幼馴染みとして育ったよしきと光。山で光が一週間行方不明になり戻ってきた後、よしきは光が「別の〈ナニカ〉にすり替わっている」ことに気づくものの、その存在と共に生活を続けるという設定は、従来のホラー作品の定石を覆すものでした。
モクモクれん自身が「もともと人間側の気持ちよりは、入れ替わってしまった後の人外の気持ちを描きたい」と語るように、本作は単なる”怪物退治”の物語ではありません。一般的なホラー漫画であれば「親友の本来の姿を取り戻そうとするバトルもの」に転じがちですが、本作では「よしきの心情を通してリアルに共感できる物語」として展開します。
特徴的な擬音表現と巧みな演出手法
『光が死んだ夏』を一目見れば誰もが気づく特徴的な要素が、擬音表現です。多くの漫画では手描きで表現される擬音が、本作では活字のフォントで印字されているという大胆な選択をしています。これは単なるデザイン上の好みではなく、作者の明確な意図によるものです。
「映像と違いマンガには音声がない」ため、文字に変化をつけて読者に伝えたいという思いから生まれたこの表現方法。モクモクれんは「手描き文字だと絵になじんでしまい、目が滑って、なかなか読んでもらえないような気がする」と考え、読者の目に入れたいところではフォント、意識しなくてもよいところは手描きと、明確な使い分けを行っています。
また、恐怖表現においても独自の哲学を持っています。「ショッキングなシーンをドーンと見せる」よりも「怖い感じが来る寸前」を好み、「ゾワゾワするような感覚を大事にしたくて、ショッキングさは、むしろ抑えめに」制作されているのです。
モクモクれん初連載から累計300万部突破までの軌跡

SNSでの話題性と各種受賞歴
『光が死んだ夏』の成功は、単にXから生まれたというだけでなく、その後もSNSを中心に話題が拡散し続けたことが大きな要因です。読者たちは作品の独特な雰囲気や擬音表現、心理描写の巧みさなどについて活発に感想を交換し、自然発生的な口コミマーケティングが形成されていきました。
連載開始からわずか1年後の2022年12月には、「このマンガがすごい!2023」オトコ編で堂々の1位に輝きました。また、「次にくるマンガ大賞2022」のWebマンガ部門ではGlobal特別賞の繁体字版も受賞。この受賞は、日本国内だけでなく海外でも熱心なファンを獲得していることを証明するものでした。
複数声優によるPV展開など斬新なプロモーション戦略
『光が死んだ夏』の人気爆発に大きく貢献したのが、前例のない革新的なプロモーション戦略でした。特に注目すべきは、2022年10月に単行本第2巻の発売を記念して実施された「4週連続・異なる声優陣によるPV公開」という大胆な施策です。
この企画では、4週にわたって毎週異なる声優陣が同じ物語を演じるPVを公開。第1弾は単行本第1巻発売時と同じく根岸耀太朗と大野智敬、第2弾はヒカル役を下野紘、よしき役を松岡禎丞、第3弾はヒカル役をKENN、よしき役を前野智昭、第4弾はヒカル役を榎木淳弥、よしき役を内山昂輝がそれぞれ担当しました。
特に下野紘、松岡禎丞が声優を務めた第2弾PVは大きな反響を呼び、2024年8月時点で200万回再生を突破する大ヒットとなりました。また、東京や大阪の主要駅での大型交通広告展開も話題を呼びました。
モクモクれん初連載「光が死んだ夏」2025年夏アニメ化決定!

待望のニュースがついに公式発表されました!モクモクれん初連載作品『光が死んだ夏』が、2025年夏にテレビアニメ化されることが決定しました。2024年5月24日に発表されたこの朗報に、ファンからは歓喜の声が上がっています。日本テレビでの放送に加え、NetflixとABEMAでの配信も決定しており、国内外での幅広い展開が期待されています。
CygamesPicturesとアニメ制作陣の実績
本作のアニメーション制作を手がけるのは、高品質なアニメーション制作で知られるCygamesPicturesです。同スタジオは、人気作品『プリンセスコネクト!Re:Dive』シリーズや『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』、『ウマ娘 シンデレラグレイ』など、原作ファンからの評価も高い作品を数多く手がけてきました。
監督・シリーズ構成を務めるのは竹下良平氏。キャラクターデザインは高橋裕一氏、音楽は梅林太郎氏が担当します。原作の特徴的な擬音表現をどのように映像化するのかは、アニメファンの最大の注目ポイントの一つです。
梅田修一朗・小林千晃ら注目の声優陣
アニメ『光が死んだ夏』の声優陣として、梅田修一朗さんと小林千晃さんが注目の名前として挙げられています。これまでのPV制作では複数の声優陣が起用されてきた経緯があり、どの声優が最終的にアニメ本編を担当するのか、ファンの間で大きな話題となっています。
Netflix・ABEMA配信など国内外での展開予定
『光が死んだ夏』のアニメは、2025年夏から日本テレビでの放送に加え、NetflixとABEMAでの配信も決定しています。特にNetflixでの配信は、海外での視聴も容易になることを意味し、すでにGlobal特別賞を受賞するなど海外ファンからの支持も高い本作の国際的な認知度がさらに高まることが期待されます。
放送・配信時期が2025年夏というのも興味深いポイントです。原作でも夏を舞台にしたホラーストーリーであることから、季節感と作品世界観の一致による相乗効果も期待できます。
モクモクれん初連載成功の創作秘話

「ミスマッチさ」を重視した独自の作風
『光が死んだ夏』を読んで最初に感じる違和感の正体は、モクモクれんが意図的に作り出した「ミスマッチさ」にあります。季節設定に夏を選んだ理由も、このミスマッチ思想の表れです。モクモクれんは「半そでが描きたかった」という実務的な理由もありつつ、「内容が暗いため、季節のなかではいちばん元気な感じがする夏がいいだろう」と考えました。
このミスマッチへのこだわりは作品の様々な要素に反映されています。単行本のカバーの色選び、PVで使用されるBGM、プロモーションビジュアルなど、いずれも意図的に明るい印象を与えるデザインが採用されています。
Jホラーや澤村伊智作品からの影響
モクモクれんのホラー表現は、長年培われた映像作品への深い愛情から生まれています。特に強い影響を受けているのが澤村伊智の作品です。また、映像表現の面では、Jホラーや白石晃士監督の作品からも大きな影響を受けています。
興味深いのは、モクモクれん自身はホラー映画を「あまり怖いとは感じない」と語っている点です。「どちらかと言えば、楽しい気持ちのほうが勝っている」と話すように、ジェットコースターやお化け屋敷のようなアトラクション感覚で恐怖作品を楽しむ感性が、『光が死んだ夏』の独特な恐怖表現に繋がっています。
擬音へのこだわりとフォント使用の意図
『光が死んだ夏』の最大の視覚的特徴は、手描きではなく活字フォントで表現された擬音表現です。特筆すべきは、ふきだしのセリフの写植は担当編集者が作業を行っているのに対し、擬音はモクモクれん自身が打っているという点です。それほどまでに擬音表現へのこだわりが強く、自らの手でフォントの選択や配置を決定しているのです。
モクモクれん初連載のファンの盛り上がり

200万回再生突破したPVと声優起用の反響
『光が死んだ夏』の人気を一気に加速させたのが、複数の声優陣によるPV展開でした。特に下野紘さん・松岡禎丞さんの組み合わせによる第2弾PVは、2024年8月時点で驚異の200万回再生を突破する大ヒットとなりました。
SNS上では各声優の演技の違いを比較する考察や、それぞれの解釈によるキャラクターの印象の変化などが活発に議論されました。特に下野さんが演じるヒカルの不気味さと、松岡さんが表現するよしきの葛藤が絶妙なバランスで表現されていると高く評価されています。
海外ファンからの高い評価(Global特別賞受賞)
『光が死んだ夏』の人気は日本国内にとどまらず、海外でも高い評価を受けています。2022年8月に「次にくるマンガ大賞2022」で受賞した「海外ファンの熱量が高かった作品に贈られる」Global特別賞がその証左です。
特に台湾や香港など繁体字を使用する地域での人気が高く、翻訳版の発売とともに現地のSNSでも大きな話題となりました。Netflixでのアニメ配信が決定したことで、今後は更に世界中のアニメファンに作品が届くことになります。
モクモクれん初連載作品をアニメ放送前に読むべき理由

原作を読むことで、よりアニメが楽しめる
『光が死んだ夏』は、その独特の表現技法と繊細な心理描写が最大の魅力です。特に活字フォントを使った特徴的な擬音表現や、「POV(Point of View)方式」と呼ばれる一人称視点の構図は、モクモクれんの創作哲学が凝縮された要素と言えるでしょう。これらの表現が、アニメではどのように映像化されるのかを比較して楽しむことは、作品の新たな魅力を発見する絶好の機会となります。
また、モクモクれんが大切にしている「ミスマッチさ」の概念も、原作とアニメを比較することでより鮮明に感じられます。
アニメ放送までに知っておきたい情報と知識
アニメ『光が死んだ夏』をより深く楽しむためには、原作の世界観や舞台設定についての理解が欠かせません。2024年12月時点で原作は6巻まで発売されていますが、アニメ第1期ではどこまでの内容が描かれるのか、考察しながら視聴するのも楽しみの一つです。
モクモクれん初連載「光が死んだ夏」に関するよくある質問

「光が死んだ夏」は何巻まで発売されていますか?
『光が死んだ夏』は2024年12月4日現在、既刊6巻まで発売されています。2021年8月31日から『ヤングエースUP』(KADOKAWA)にて連載がスタートし、現在も連載が続いています。
アニメ版はどの巻まで放送される予定ですか?
現時点(2024年12月現在)では、アニメ版が原作の何巻までをカバーするかについての公式発表はありません。一般的な1クールアニメ(全12〜13話)の場合、原作の3〜4巻程度までが映像化されると予想されます。
モクモクれんのSNSアカウントはどこで見られますか?
モクモクれんさんは主にX(Twitter)で情報を発信しています。アカウント名は「@mokmok_len」で、作品に関する情報やイラスト、イベント参加情報などを定期的に投稿しています。
モクモクれん初連載から快進撃までの軌跡まとめ

『光が死んだ夏』の誕生から現在に至るまでの軌跡は、現代のマンガ業界における新たな才能発掘と成功のモデルケースと言えるでしょう。2021年初頭、コロナ禍で時間ができたことをきっかけに、もともと漫画家志望ではなかったモクモクれんがXに投稿した作品。それが瞬く間に反響を呼び、わずか数ヶ月後には商業連載へと至り、3年あまりで300万部を突破する大ヒット作となりました。
その成功の背景には、「ミスマッチさ」を大切にする独自の創作哲学、活字フォントを使った特徴的な擬音表現、三重県の山間部を舞台にした閉塞的な世界観、そして何より「”ナニカ”になってしまったヒカル」とよしきの間の複雑な感情描写があります。
2025年夏のアニメ放送を機に、さらなる人気拡大が予想される本作。アニメファンもマンガファンも、今のうちに原作を読んで、この稀有な才能が生み出した恐怖と感動の物語に触れてみてはいかがでしょうか。